買い物
大作や五反田では用が足りないとき
かあちゃんは町田へ
買い物に行くことが多かった
町田にはなんでもある
親戚のお祝い物、生活用品…
ある夏の日
かあちゃんが白かクリーム色のスーツを着て
出掛けるのを見て
あまりの変身ぶりに目を丸くして驚いた
もんぺ姿のかあちゃんとは
別人のようだ
外便所の横で何か言っていた
「すぐけえってくるからおとなしくして待ってろ」
とでも言っていたのかな
それにしても
かあちゃんが綺麗な洋服姿で立っているのを見たのは
あの時が最初で最後である
保子も敏郎も末子も
かあちゃんが立っている姿は
あまり見ていないのではないかな
足が悪くなり自分で買い物に行けなくなると
ねえちゃんに頼んでいたが
品質や値段で満足していなかった
ねえちゃんが
「じゃあ自分で買ってきなよ」
かあちゃんは憮然として何も言わなくなる