炊事(おさんどん)
おふくろが身体が弱かったので
炊事はお婆ちゃんと姉が賄っていた
代用食としてよく冷や麦を喰わされたっけ
自家製で小麦粉を捏ね
座敷の上がり框のところで
手動の製麺機にかけていたのを思いだす
かつおぶしを削り大鍋でつゆを作る
具は長ネギと油揚げが入っている
あんちゃんと自分は
「またそばかよ~」
といっておふくろを困らせた
お婆ちゃんは食べ物を決して粗末にしなかった
カビの生えた餅を削って食べ饐えた飯を水で洗い
家族全員が食わされる
喰わないと温い飯はくれない
お婆ちゃんの好物はもち入りのおじやで
3杯も4杯も食べる
夏場は自家製の梅干しを宝物のように干していた
冬場には白菜や大根を大きな樽に漬けこむ
農家では御新香は必要不可欠である
夏休み
お婆ちゃんと保子と一緒に畑の草むしりをして
手足が泥で真っ黒になる
昼になり帰ると
お婆ちゃんは急いで昼飯の支度にかかる
きゅうりを塩でもみ酢を入れきゅうりもみを作るのだが
作り終わるとお婆ちゃんの手が酢できれいになっている
それから暫くきゅうりもみは喰わなかった
ホーロクで焼くべったら焼きやあられもよく喰った
葛湯や蕎麦掻きの味は忘れかけている