かあちゃん 4.
鍋転がしに行く途中の日吉の里が見える場所に
畑を借りた時期がある
夏の終わり、若かったおふくろが鍬をふるい
畑を耕していた時ににわか雨が降りだす
おまけに物凄い雷が鳴る
青白い光がピカピカすると
天地がひっくり返るような雷が鳴る
「うわー」「早くしろー」
おふくろと畑の上方にある崖の下に逃げ込む
暫く震えながら待つ間
雷の怖さを話してくれる
同じように畑を耕していた時
雷が鳴っても時間を惜しみ
作業を続けていた人の鍬に雷が落ちて
その人は鍬を振り上げた瞬間の姿で
立ったまま即死したという
鍋転がしの畑に親父とおふくろと三人で畑を耕して
昼には野良弁当を食べた嬉しい思い出がある
自分は草をかき込む手伝いをしたが
どの程度役に立ったのか
寧ろ邪魔だったのかな
喉が渇くと付近の山で湧水を飲む
冷たくて旨い
それにしても姉や兄は何をしていたのかな?
おふくろが
薫は乳飲み子の頃から畑に連れて行き
籠か笊に入れて寝かせていたという
こうじさらく*1の人々は
幼い私が畑のそばで
「よくかがみっちょ*2で遊んでいた」といっていた
*1 「こうじさん」という人の開拓した畑のことを
こう言い伝えられている
*2 とかげのこと