追憶

父が雑記帳に記していることを娘のワタシが転記していこうと思います

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

かあちゃんと行商人

昔は様々な行商人が村々を廻り商いをしていた 豆腐屋、魚屋、洋品店、呉服屋 生地(布)屋、薬屋、等々 また闇米の買い付け、豚の買い付け 玄米パン、アイスキャンディーなど どこの家も現金がなく物々交換をしていたのを見ている 生地屋は布を測る際に物差し…

春から夏にかけて

屋敷の横の畑では さやえんどうが沢山実をつけている 茄子やきゅうり、南瓜、いんげんなども負けじと 白、黄、紫の花を咲かせ やがて実をつける ある年 屋敷の裏の畑にマクワウリを蒔く かあちゃんは腫れ物に触るようにして育てる 花が咲き実をつけるころ 藁…

買い物

大作や五反田では用が足りないとき かあちゃんは町田へ 買い物に行くことが多かった 町田にはなんでもある 親戚のお祝い物、生活用品… ある夏の日 かあちゃんが白かクリーム色のスーツを着て 出掛けるのを見て あまりの変身ぶりに目を丸くして驚いた もんぺ…

かあちゃんの喜びと悲しみ

自分が小学生低学年の頃 すべてのテストが100点満点の時期があった 答案用紙を持って帰ると かあちゃんは喜び誇らしげに 「薫は府中に似ているんだ」と言い 答案用紙を宝物のように保管していた 中学校の頃は悪知恵が働き 給食費を使いこんだり 辞書を買うと…

寝小便

寒い冬の朝 ぬくぬくと温かい布団にくるまれていると 何故か おふくろの胎内にいるような錯覚を起こす 子供の頃 台所に近い三畳間 北側はガラス窓でよくいたずら書きをする この部屋であんちゃんと二人 一組の布団で寝る 自分は毎日のように寝小便をする 背…

台所

かあちゃんはよく、おさんどんと言っていた 若い頃のかあちゃんは揚げ物が得意で 土間でよく天麩羅を揚げていた 揚がると菜箸で油を切る 溜めてある揚げ物を あんちゃんと二人でつまみ食いする かあちゃんは怒ることもなく 黙々と揚げ続ける 中身はさつまい…

終戦後

終戦後 漸くおとっちゃんが兵隊から帰ってくる おとっちゃんには大工仕事が待っている 当然農作業は年老いたおばあちゃんと かあちゃんの肩にどっしりと掛かっていた 相変わらず生活は楽にならない 農閑期の冬 かあちゃんは山の薪運びをする 男衆が木を伐り …