追憶

父が雑記帳に記していることを娘のワタシが転記していこうと思います

終戦後

終戦

漸くおとっちゃんが兵隊から帰ってくる

おとっちゃんには大工仕事が待っている

 

当然農作業は年老いたおばあちゃんと

かあちゃんの肩にどっしりと掛かっていた

相変わらず生活は楽にならない

 

農閑期の冬

かあちゃんは山の薪運びをする

 

男衆が木を伐り

束ねて山の所々に積んである

 

かあちゃんは日吉の山に

近所のおばさんと二人薪運びに出掛ける

 

子供の頃かあちゃんを追いかけるようにして

山に登ったが

歩くだけでも大変な険しいところで

 

一歩足を踏み外したら

谷底に転げ落ちるような傾斜面だ

 

賃金は一束運んで幾らになるのかわからないが

とにかく現金が必要だったと思う

 

負けず嫌いなかあちゃん

一束でも余計に運び頑張った

小柄なかあちゃんにとっては

過酷で重労働だったに違いない

 

重い薪を背負い

一歩一歩足元を確認しながら山を下るのだが

時として

足を踏み外しそうになることがあるらしい

 

足を捻り痛むのを我慢し

陽が暮れるまで続ける

『あの時の無理がリュウマチの原因だよ』

と後年かあちゃんは言っていた