追憶

父が雑記帳に記していることを娘のワタシが転記していこうと思います

魔がさしたおとっちゃん

泥だらけになって働く農業が嫌で嫌で

早く親父や兄貴のようにさっぱりとした格好で大工になりたいと思っていた。

漸く念願が叶い大工になったものの、

大工を続けるか辞めようか随分悩んだ時期がある。

そんな頃親父が浮気をする。

 

ある日の夕方親父が家を出ていくという。

兄貴と二人で土間の玄関に立ちふさがり

必死になって止める。まさに家庭崩壊寸前である。

目標を失ったような感じで兄貴と二人で縁側に座り、

前の山を虚ろな目で見ていたのを思い出す。

座敷にいたおふくろが慰めの言葉をかけてくれた

何を言われたのかよく覚えていないが

「おめえたちがしっかりしろ」と言われたような気がする。

おふくろにしてみれば地獄のような日々だったと思う。

 

自分が大工を辞める時、親父は座敷の隅にある

姉のミシンの椅子を振り上げ怒り狂う

姉が止めに入り漸く治まるが怒るのは無理もない。

道具を揃え新品の自転車を買って間もないころなのだ。

動物が子供に餌の取り方を教えるように身体を使って懸命に教えてくれたのに