追憶

父が雑記帳に記していることを娘のワタシが転記していこうと思います

大工の親父

長沢の中心地には集会場があり、精米所、駄菓子屋、寄せ場、火の見やぐらなどがある。

その真ん中を流れる小川があり、近隣の人が野菜を洗って市場に出荷する。

また、田圃に水を引く川だ。

その川の堰を整備するのを親父は頼まれる。

木枠を作り、コンクリートを流し込む。

数日後立派な堰が出来上がる。小学校の行き帰り、親父が作ったその堰を見るたび誇らしくなる。

村のお寺、お宮、お稲荷さん、お地蔵さんに到るまで、親父の手掛けた跡が沢山ある。

親父の子供でよかった大工の息子でよかったと思うことが多かった。

小学生の頃、学校からの帰り道長沢のおじさん達が「どこの子だ」と言うと

他のおじさんが「店の*でえくさんの2番目だ」                      *大工

「そう言われればハンコを押したようだな」

「間違いねえや」と笑っている。

嬉しかったり照れくさかったりしたが、俺の「自慢の親父だ」と心で叫んだ。