追憶

父が雑記帳に記していることを娘のワタシが転記していこうと思います

かあちゃんと行商人

昔は様々な行商人が村々を廻り商いをしていた

豆腐屋、魚屋、洋品店、呉服屋

生地(布)屋、薬屋、等々

また闇米の買い付け、豚の買い付け

玄米パン、アイスキャンディーなど

 

どこの家も現金がなく物々交換をしていたのを見ている

 

生地屋は布を測る際に物差しを巧みにごまかす

また農民は穀物を計る枡に親指を入れたまま図ったり

枡の中央を抉るようにして量る

今となっては滑稽な光景であるが

人間味が溢れている

 

売る側の商人も買う側も真剣そのものである

目の色をかえて駆け引きをする様を見ていると

動物の餌の取り合いのようであった

 

行商人の中には

とんでもない詐欺師のような人も沢山いた

叔父の勝男や義男が独身で同居していたころ

警察が来て取り調べをされたことがあった

なんと

叔父が買った背広が盗品だったと分かる

 

背広といえば

俄か雨にぬれて背広が縮み

子供服のようになってしまった粗悪品があったらしい

 

また靴なども

雨の日に履いていて何か臭うと思い

底を見るとするめが貼られていたなど

大笑いするような代物があったと叔父たちから聞いている

 

またゴム紐の押し売りが良く来た

土間の上がり框で

「昨日刑務所から出てきたばかりだ」

と凄んだり脅したりする時代であった