追憶

父が雑記帳に記していることを娘のワタシが転記していこうと思います

寝小便

寒い冬の朝

ぬくぬくと温かい布団にくるまれていると

何故か

おふくろの胎内にいるような錯覚を起こす

 

子供の頃

台所に近い三畳間

北側はガラス窓でよくいたずら書きをする

 

この部屋であんちゃんと二人

一組の布団で寝る

 

自分は毎日のように寝小便をする

背中や尻が生暖かくて目が覚める

 

泣いていると

かあちゃんが行李の中からパンツとボロ布を出し

布団の上にボロ布を敷き

パンツをはかせてくれ

「早く寝ちめえ」

と言ってデエに入っていく

 

あんちゃんはぐっすり眠っている

 

小学校に入学してからも失敗する

恐ろしい量の時もある

怒られるので冷たくなった布団の上で

朝の来るのをじっと待つ

 

便所や道端で勢いよく小便をしている

途中であっ、と思っても

気付くと時すでに遅し

パンツもシャツも布団もぐしょ濡れで

後の祭り

 

かあちゃんに迷惑のかけどおしだったが

この頃の迷惑がはじまりだったようだ

 

ある日かあちゃん

「薫、これ飲んでみろ」

とニヤニヤ笑っている

何とも得体の知れない飲み物で

嫌々飲んでみる

「ん……」

顔じゅうで不味さを訴える

かあちゃんはクスクスと笑っている

 

なんとそれは

蚯蚓(ミミズ)を煎じたものだった

寝小便に効き目があったのかな