親父の闘病2
同じ病院に入院していた叔母と会い
姉弟にしか解からない空気の中親父は泣いていた
子どもの頃でも思い出していたのだろうか?
子供の頃と言えば親父にとっては大御馳走だったに違いない
「ぼたもちを作ってきてくれ」と言い
美味そうに喰っていたと後日聞かされる
兄弟6人交替で看病する
会社の帰りに病院に寄り一晩泊まる
翌日病院から会社に向かう日もあった
ある晩
「ジュース取ってくれ」と言う
冷蔵庫からジュースを出し吸口に移してから飲ませると
「おめえも飲め、あと残ったら皆さんに飲んでもらえ」
「皆さんて誰も居ねえよ」
「そこに居るじゃあねえか」
後ろを振り向くと誰も居ない。夜中なので薄気味悪くなる。
強い薬で幻覚症状にかかっているらしい
兄弟に話すと妹の洋子(故)の話をしたという
「洋子に逢ったらチリ紙を一枚取っては風に飛ばしているので
『何をしているのよ』と訊くと、洋子は『チリ紙を売っているの』
と答えた」
という
また、兄貴の顔を見て『下の島ちゃんか』などと
とうの昔に他界した人の名を呼び間違えている
この頃には腹水が溜まり大量の吐血をしたりする
親父は半分霊界へ行ってしまったのだと感じた