畑仕事
ある日、鍋ころがしの畑で、親父と兄貴と三人で麦刈りをしていた時に
突然バラバラと音をたてて落ちてくるものがあった。なんと散弾銃の流れ弾だ。
親父は「あぶねえな!」と辺りを見回すが誰も居ない。親父は怒るに怒れない。
「鉄砲打ちだんべ、まったくしょうがねえな」
などと言い乍ら、また何事もなかったように麦刈りを始める。
暇人をかまっている時間などないのだ。
秋、こうじさらくの畑の上に二ヶ所、さつまいもを保存する為、親父は深い穴を掘る。
穴の周りを藁で仕切り、束ねたさつまいもを入れる。
藁で囲み土を被せる。何度か掘り返してこいと頼まれたことがあるが
時期が遅いとさつまいもに芽が出てしまう。
*「こうじさらく」とは
塔の越の「こうじさん」という人が開墾し、畑にした場所(畑)なので
「こうじさんあらく」と言っていたらしく、それが訛って
「こうじさらく」になったと言い伝えられたようだ。