追憶

父が雑記帳に記していることを娘のワタシが転記していこうと思います

かあちゃんの好きだった五目そば

 

スープは薄味で

具は海老、いか、豚肉、チャーシュー

筍、ピーマン、人参、白菜、ナルト、ハム、

卵、長ネギ、等々…

 

兄貴夫婦と買い物の帰り

溝の口駅前の料理店に寄ったかあちゃんの話を聞いている

 

兄貴はおふくろをおんぶして連れて行ったらしい

 

平成6年頃

自分は毎日その店の前を通った

サンプルケースの中には昔ながらの五目そばがデンと置いてあった

 

見るたびに胸がキュンとなる

その頃はかあちゃんが他界して22年

自分は55歳を迎える

 

かあちゃんと五目そばを一緒に喰ったら

さぞかし旨かろうと思う

 

かあちゃんにとって

五目そばは最高のご馳走だったのかな

 

今は駅前拡張で店舗は移動しているので

見ることはできない

 

*****

 

インスタントラーメンが発売された頃

「薫、日吉の『さんの屋』でラーメン買ってこいよ、皆で喰うべえ」

「うん」

小銭を貰い喜んで走るようにして買いに行く

 

皆楽しみで首を長くして待っている

小鳥が餌を待っているように

かあちゃんがお湯を入れ蓋をし

わくわくしながら待つ

 

待ちきれずに何回もふたを開け中をのぞき込む

漸く出来上がり喰い始める

 

これがまた薬臭い

麺はまるで輪ゴムを喰っているような味である

決して美味いとは言えない

でも今までには味わったことのない珍しい味なので

子供たちは皆全部平らげる

鼻をズルズルさせながら