追憶

父が雑記帳に記していることを娘のワタシが転記していこうと思います

天秤棒

ある日かあちゃん

「じゃがいもを市場に出荷するから手伝ってくれよ」

西側の物置からじゃがいもを俵に詰めて目方を量る

 

俵は米俵を半分にした浅い俵で

秤は棒秤なので一人では量れないのだ

 

かあちゃんが低い椅子に座ったままの状態で

自分は立って天秤棒を担ぐ

かあちゃんは天秤棒が水平になるまで

右手でじゃがいもを掴み

増やしたり減らしたりして調節する

 

2~3回繰り返すうちに

棒の先端から分銅が外れ

棒が跳ね上がり

かあちゃんのおでこをしたたか打つ

笑うに笑えず困った

かあちゃんは顔を歪め痛がっていた

 

世界初の人工衛星スプートニク1号が飛び

南極観測船宗谷丸が立ち往生した昭和32年

秋が深まる頃の懐かしい思い出

 

あれから44年

あの日の庭の匂いも音も空気も

かあちゃんの姿も今なお鮮明に蘇る