天秤棒
ある日かあちゃんが
「じゃがいもを市場に出荷するから手伝ってくれよ」
西側の物置からじゃがいもを俵に詰めて目方を量る
俵は米俵を半分にした浅い俵で
秤は棒秤なので一人では量れないのだ
かあちゃんが低い椅子に座ったままの状態で
自分は立って天秤棒を担ぐ
かあちゃんは天秤棒が水平になるまで
右手でじゃがいもを掴み
増やしたり減らしたりして調節する
2~3回繰り返すうちに
棒の先端から分銅が外れ
棒が跳ね上がり
かあちゃんのおでこをしたたか打つ
笑うに笑えず困った
かあちゃんは顔を歪め痛がっていた
秋が深まる頃の懐かしい思い出
あれから44年
あの日の庭の匂いも音も空気も
かあちゃんの姿も今なお鮮明に蘇る