追憶

父が雑記帳に記していることを娘のワタシが転記していこうと思います

かあちゃん 1.

東京都府中市の旧家に

大正3年

女の子ばかりの末娘として誕生する

代々続いた大きな農家で

父親は婿養子

また祖父も婿養子なのである

 

子どもの頃のおふくろは

水泳やかけっこが得意な

活発で俊敏な女の子だったと本人から聞いている

すぐ上の姉と仲が良く

娘時代の話をしては懐かしそうにしていたのを思い出す

 

当時の農家の娘は皆

当たり前のように奉公に出される

所謂、花嫁修業としてらしい

大工の職人として働いていた親父と知り合ったのも

この頃だったと想像する

 

知り合って間もなくの頃

おふくろは親父に

「あなたの一番好きなものはなんですか?」

と訊くと

「煙草だ」

と答えたらしい

「私が好きなら一番好きな煙草を止められる」

そう言って煙草を止めさせたと子供たちは聞いているが

どうやら親父は隠れて吸っていたらしい

 

おふくろは新宿の三越や二幸をよく知っていたので

新宿あたりに奉公に行っていたのかな